2010年12月06日

西宮文学案内第3回・SOS団西宮支部!?

From NV1

市民公開講座「西宮文学案内」が10月〜11月に全3回開催されました。
有料(500円/回)ですが,各回ともに会場定員の満了でした。
101020a_036_西宮文学案内・配布資料.jpg
主催関係者(西宮文化振興財団,河内厚郎氏等)からは,来年度の次回開催や拡充を考えているとのことでした。


戦前からこれまで,西宮市に関わりのある作家・作品は多くあります。その中でも,現在最も有名な作品・作家がテーマに採り上げられています。
企画・協力には,阪神間文化の第一人者の河内厚郎氏と同事務所が関わっています。

各テーマは,全国区もとい”世界基準”と言えるものです。
第1回 村上春樹と『阪神間』の文化 講師:内田樹
第2回 水木しげるの西宮時代 講師:村上知彦
第3回 アニメ『涼宮ハルヒ』の「聖地」西宮 講師:土居豊


著名なテーマばかりでもあり,各回の参加者は幅広い年齢層で性別も大きな偏りは見られませんでした。


また,会場の場所にも工夫があります。
第1回:ヴォーリズ建築は歴史的建築で,第2回:今津,第3回:西宮北口はテーマに関係深い場所です。
講演の前後に実際に見て回り,地域の雰囲気を感じることできる機会となります。


以下,第3回『涼宮ハルヒ』の概要報告します。
なお,※部は筆者が補足付記したもので,原作文庫からの引用部(cf.)は時間不足で確認不十分です。


◆日時・場所 
101123b_317_西宮北口・アクタ西宮.jpg
日時:2010年11月23日(火・祝)14:00〜15:30
場所:アクタ西宮東館6階 西宮市大学交流センター大講義室


◆レジュメ・事前スライド 
講師のレジュメ(A4で4ページ)には,講演の意図,作品の話題性・価値,村上春樹作品との親近性(ハルキとハルヒ)等が簡潔にまとめられてました。
また,開場から開始前までの間,『涼宮ハルヒ』シリーズを紹介する講師スライドと作品音楽が流れました。参加者層が幅広く,ハルヒ作品をあまり知らない方への導入の配慮です。


◆話の流れ 
配布されたワークシートには,講師の遊び心が見られました。
話の項目が,シート上で六角形の頂点に書かれています。項目は,(1)総合,(2)阪神間度,(3)ラノベ(ライトノベル)度,(4)アニオタ度,(5)パロディ度,(6)SF度の6つです。


101123c_ワークシート再現図アニメ.gif

※講師:土居豊氏作成のワークシートの再現図 (作成ツール:GIFアニメ工房


話の順に線を結ぶと,西宮市章の六芒星風になり,完成図形の中央に「SOS団西宮支部」と書くようになっています。


◆まとめ 
(1)総合度

テーマ:「涼宮ハルヒ」という世界を魅了するアニメを創り出した関西文化の底力
定義:「涼宮ハルヒ」は究極のハイブリッドコンテンツ

村上春樹の「1Q84」に匹敵する重層的な作品世界

日本,いや,西宮から世界に発信するにふさわしい作品である

◆各論 
他5項目での主な事柄を書き出しておきます。
(2)阪神間度

 ・アニメで描かれた古きよき風景
  *既に失われた震災以前の阪神間の風景
  *アニメの中に永遠に保存された西宮北口
 ・原作ラノベ版ではアニメ版と違い明示的に西宮は出てこないが阪神間とわかる
  *cf.「憂鬱」:日本有数の地方都市,5万人入る球場
(3)ラノベ度
 ・原作ラノベは,村上春樹作品へのリスペクトが見られる
  *キョンの独り語り,「やれやれ」の口癖
  *1作目「憂鬱」はボーイミーツガールのストーリー
  *2作目以降,ハルヒ,キョンと長門の三角関係へ
(4)アニオタ度
 ・ジャパニメーションらしく「クール」でスタイリッシュな映像と音楽とともに,「萌え」の要素も
  *京都アニメーションの職人芸
 ・実写では描けない映像,また小説では描けない描写としてのアニメ作品の価値!
  *実写風景は古びるが,アニメ風景は実写ほどには古びない!
(5)パロディ度
 ・パロディにより,階層や深みのある組み立てとなる
 ・SF技法で別次元と平行で進むときに使われやすい
  *cf.「溜息」?でのハルヒ鼻歌の元曲の多彩さ
(6)SF度
 ・平行宇宙や円形ループ
  *原作者やアニメ制作者の年代からして『うる星やつら』が根底にあるのではないか
 ・関西発SF文学の継承者
  *関西在住SF作家:小松左京,筒井康隆,眉村卓からの系譜
 ・「外的世界を変える」と「自らの内面世界を変える」の選択
  *cf.「溜息」「退屈」?から引用

◆その他 
・講師はハルヒより先に『灼眼のシャナ』を視聴しており,
 ハルヒを最初に見たときにシャナが出ていると思ったそう。
 ※絵師/キャラクター原案:いとうのいぢ氏で同じですから…。
・『Angel Beats!』のラストは村上春樹『100%女の子』に似ている。
 AB!は気付いたあたりで終わるが,100%は気付かずに終わる。
※偶然でしょうが,「シャナ」「AB!」いずれも,関西では深夜に再放送中。

◆所感・謝辞 
ライトノベル版とアニメ版の『涼宮ハルヒ』シリーズを,非常に多面的に考察されており,作品を更に楽しむための示唆に富んだ講演でした。
ロケハン紹介はDVD特典映像や公式ガイド等で既に見られますが,研究考察の書籍はあまり見かけないので今後出版される流れになるように期待したいです。
また,レジュメのWikipedia引用で当方に関する部分を補足説明するため,限られた時間を割いていただきましたこと,この場にて改めて感謝申し上げます。

◆あとがき 
講演終了後しばらくの後,「珈琲館ドリーム」へ行きましたが,ほぼ満席でした。
ちゃうけ氏,きーぼー氏,甲山タイガース氏の「涼宮ハルヒ−ドリーム」コミュニティの著名人と,glen smith氏,正孝氏と同席させていただき,色々と話をお聞きしました。
特に,山梨県から来られた西宮市出身の正孝氏からは,「消失」文庫版あとがきにまつわる非常に貴重な話をいただきました。

◆参考 
(財)西宮市文化振興財団 西宮文化サロン<文学シリーズ>西宮文学案内
  http://amity.nishi.or.jp/cs2010lit.html
土居豊氏のホームページ
  http://web.mac.com/yutakun1/iWeb/Site/Welcome.html
西宮市ホームページ よくあるご質問 西宮市の市章について教えてください。
  http://www.nishi.or.jp/contents/00009721000200005.html


ブログ内関連記事:
『空の境界』礼園女学園とヴォーリズ建築 2010年10月21日
  http://hyogotsucool.seesaa.net/article/166573994.html


 

posted by NV1 at 21:05| Comment(0) | TrackBack(1) | 涼宮ハルヒ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

西宮文学案内第3回 アニメ『涼宮ハルヒ』の「聖地」西宮レポ
Excerpt: 11月23日、西宮北口ACTA東館6階の西宮市大学交流センター大講義室で行われた講演 西宮文学案内第3回 アニメ『涼宮ハルヒ』の「聖地」西宮 を聞きに行って来ました。講師は作家の土井豊さんです。 土..
Weblog: きーぼー堂
Tracked: 2010-12-07 00:58
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。