2010年07月26日

「町おこしin羽後町」〜町おこし活動の基本に忠実だから成功

From NV1

山内貴範氏の著書『町おこしin羽後町〜美少女イラストを使ってやってみた〜』を 取り上げます。
100725町おこしin羽後町・表.jpg
ほぼ1年前の出版物であり,私もかなり以前に読んだもので,既にレビューも色々と出ているとは思いますが,敢えて記事にしておきます。

アニメ絵でまちおこし」の取り組みが増える一方で,コンテンツの制作や権利管理の関係者からは「地元らしさ」のない未熟な企画提案の多さの指摘もあります。

本書は,当ブログ活動の目的・テーマでもある「サブカルチャーのコンテンツを活用した地域活性化」(アニメ絵に限定せず!)に関して,個人的にとても良く情報がまとまっていると感じるので,内容を紹介しておきたいと思います。


以下,興味のある方はどうぞ・・・。


1.羽後町について  

秋田県羽後町といえば,美少女イラスト」による町おこしで,ご存知のように知名度を上げました。
主なものとして,

  • かがり美少女イラストコンテスト」開催 (2007年7月7日,夏祭り「かかり火天国」のイベントの一環で開催)
    → 以降,毎年実施。他の商品パッケージやスティックポスター等の企画につながる。
  • 西又葵氏の「美少女イラスト」をパッケージにした地元米(あきたこまち)発売 (2008年9月29日)
    → 他の地元商品「いちご」や「焼酎」等のイラストパッケージへ。
  • 著名イラストレータ16人による「スティックポスターin羽後町」発売 (2008年6月28日)
    → ポスターに描かれた地元名所を訪問する者が増加。
これらの事業を企画したのが,地元出身で東京の出版社に勤務される山内貴範氏で本書の著者です。


2.羽後町で取り組んできたこと  

企画者たちが,一時的な「萌えおこし」とは一線を画しており地元資源を知ってもらうきっかけのツールとして「美少女イラスト」を使っていることがよくわかります。


本書の帯(本文より)は,
 > これが、町おこしの基本だ。
 > ・・・奇抜なことは何1つなく、基本を忠実にやってきていることだけなのです。
 > 1.好きなことや興味のあることをやる
 > 2.埋もれている資源を発掘する
 > 3.新旧の文化を融合させる
 > この3点が私が活動していく上での基本理念です・・・
となっており,本文でそのプロセスが丁寧に説明されています。


(1)著者の取り組み過程 
〜好きなことや興味のあることをやる〜
著者は1985年生・20歳代ですが,地元中学生の頃の出来事が活動のはじまりとなっています。
 1999年 学習塾チラシのイラストを手掛ける
 2002年 学習塾/書店の自販機の企画やイラストを担当
 2005年〜 学習塾チラシをプロデュース(プロのイラストレーターを起用)
 以降,前述の町おこし活動へ

〜埋もれている資源を発掘する〜
また,地元外の大学生の頃,地域外から地域を見ることで「これまで何もないと思っていた故郷にも何かある」[本書 P.37]と気づき,地元資源に目を向けられています:
 西馬音内盆踊り(国指定重要無形民族文化財),三輪神社,
 鈴木家住宅(国指定重要文化財),茅葺き民家集落 等


(2)活動の主体や考え方 
活動については,町全体や行政主導ではなく,著者の取り組み継続のほか,地元銀行の支店長をはじめとする賛同者の協力によるものであることが述べられています。
また,「萌え」等の言葉から想起される偏ったイメージ(報道)に対する反発についても言及されています。


〜新旧の文化を融合させる〜
「スティックポスター」の制作については,出版発売やイラスト以外の部分は町内の人たちの共作がとられています。具体的には,解説文:町立図書館長,ロゴ:地元の篆刻家,箱絵:町内の絞り染め作家などです。16種類の題材(所在地)を飾る美少女イラストについても,イラストレーターの作品イメージ(作風)と地元の題材(地域資源)がうまくマッチングするように著者自らが考案したことが,質にこだわるファンの満足度につながると述べられています。


3.本書の所感  
100725町おこしin羽後町・裏.jpg
本書を読むまで,羽後町の事例についてメディア等の紹介だけで,私自身が知る限りの認識は,かなり断片的なものだったと感じさせられました。
埼玉県鷲宮町(現久喜市)と共通する部分:コンテンツに対する敬意がある一方で,それとは違う部分:「秋葉原」的なコンテンツの消費地だけにはしない,もあるようです。


最初に手にとったときは「高い」と感じます。A4版で非常に薄い(100ページ弱,最初の1/4程がカラー)のに,1,260円ですから。
でも,著者自らが,地元での活動歴や,イラスト・イベント企画に込めた考え方,今後の課題(地元での企画継続)などを書いています。その内容は簡潔にまとめられており,文句なく高コストパフォーマンスで,損はしないと思います。


(書籍データ)
 町おこし in 羽後町 〜美少女イラストを使ってやってみた〜
 著者/山内貴範 発行/株式会社アドスリー 販売/丸善
 平成21年7月31日初版発行
 ISBN/978-4-904419-02-1 C0030


(参考)
 (株)アドスリー 町おこしin羽後町 〜美少女イラストを使ってやってみた〜
  http://www.adthree.com/publ/etc/ugo/index.htm
 山内貴範氏インタビュー(全5回)2009年6月〜8月
  http://www.adthree.com/poster-ugo/in_01.html
  http://www.adthree.com/poster-ugo/in_02.html
  http://www.adthree.com/poster-ugo/in_03.html
  http://www.adthree.com/poster-ugo/in_04.html
  http://www.adthree.com/poster-ugo/in_05.html


 羽後町「かがり美少女イラストコンテスト」情報ページ
 「かがり美少女」巡回作品展を秋田市で行います 2010年07月21日
  http://hachinosu175.blog107.fc2.com/blog-entry-143.html
 第4回かがり美少女イラストコンテスト結果発表 2010年07月11日
  http://hachinosu175.blog107.fc2.com/blog-entry-141.html

posted by NV1 at 18:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 資料紹介・会議報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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