開催中の上海万博では,日本産業館や日本館は行列になる程だとか。『涼宮ハルヒ』の映像が日本ポップカルチャー紹介で出ていたよ,とは開幕早々のGWに行った課員の報告。
兵庫県の紹介コーナーもあるそうで,特に今は「ひょうごウィーク」(2010.07.10-07.18)中です。
さて,本稿では,世界で「兵庫県」を大いに知ってもらうために,「涼宮ハルヒ」等のアニメ・マンガのコンテンツを活用することについて考えてみる,という談……です。
なお,いくつかの事柄をあげるだけで,研究論文のような厳密な論証を展開しないことを,前もってお断りしておきます。
まず,海外でのアニメ人気 ― 特に『涼宮ハルヒ』について ― を見ておきます。
アニメに関心ない人は「本当にそうなの?」でしょうか。アニメに関心ある人も多くは「多分そうらしい…」程度かもしれません。
1.世界では…
櫻井孝昌氏(コンテンツメディアプロデューサー)が著された新書2冊を参考文献に。
関心のある方は一読をおすすめします。
[1] 「アニメ文化外交」 (2009年05月刊)
[2] 「日本はアニメで再興する」 (2010年04月刊)

この2冊より,「涼宮ハルヒ」の人気ぶりの記述を引用します。
文献[1]
PP.084-087 2008年10月末 バルセロナのイベントにて
>+涼宮ハルヒがヨーロッパで大増殖中!?
> ……しかし、なんと言っても注目すべきは、涼宮ハルヒの大増殖である。
> 二〇〇八年七月に……はまだ目立った勢力にはなっていなかったが、
> この数ヵ月で明らかにSOS団は欧州進出に成功したようだ。……
> [SOS団の女性3名のコスプレのバルセロナ3人娘の写真と紹介]
> ……彼女たちはケータイに「ハレ晴れユカイ」の音楽を入れてあり、
> それに合わせて踊り出した。カ・ン・ペ・キ。……
> [日本でのハルヒダンスの動画をネット投稿することの説明]
> ……同じことをヨーロッパの若者たちが真似しているわけだ。
PP.158-159 2008年11月 パリにて
>+「涼宮ハルヒの憂鬱」のヒットが教えてくれること
> ……発売されたばかりの「涼宮ハルヒの憂鬱」の出だしも好調だという。……
> ……日本のアニメ・マンガ専門店で取材したところ、「涼宮ハルヒの憂鬱」DVDは、
> 一〇本入れたらあっというまに八本売れたと言っていた。と……
> ……ハルヒの持っているパワーと言えるだろうが、……
文献[2]
PP.014-017 2009年11月 モスクワのフェスティバルでの講演にて
>+ロシアの若者の日本への“片思い”
> みな、こちらが驚くほど日本のアニメのことを知っている。
> 「涼宮ハルヒの憂鬱」なんで常識じゃんという感じである。
> 実際、劇場内に作られた物販コーナーでは「涼宮ハルヒの憂鬱」の
> 正規品DVDが販売されていた。
PP.057-061 2009年5月 ジュネーブのマンガ店にて
>+一日5冊のマンガを読むジュネーブのマンガ書店主
> ……店内にはほかに、フィギュアもたくさん並んでいた。
> だが、フランスでも人気急上昇中だった涼宮ハルヒのフィギュアがなかったので聞いて
> みたら、「もちろんありますよ、ただ、売り切れたんです」とのこと。失礼しました。……
著者は2007年12月〜2010年03月の間に,世界16カ国延べ38都市を訪問され,外務省のアニメやポップカルチャーの文化外交等で,現地の人に講演されています。
その国々は,まさにワールドワイド:
文献[1]:
ミャンマー,サウジアラビア,チェコ,イタリア,スペイン,カンボジア,フランス
文献[2]:
ロシア,ブラジル,スイス,イタリア,スペイン,韓国 / 今後に,中国,アメリカ
新書では,その行く先々で会場に溢れんばかりに現地ファンが来場したことや,日本のアニメに感化されたファンの生声が記されています。
フランスのジャパンエキスポ等の海外展示イベントのことのほか,ビジネスや文化親善の可能性への言及もあります。
この新書以外でも,テレビニュースやネット記事等で盛況ぶりを見かけることが時々あるから判断して,海外でのアニメ人気のすごさは,確からしそうです。
※2010年07月23日追記:
週刊アスキー2010年08月03日号で,著者の櫻井孝昌氏が『涼宮ハルヒ』シリーズの舞台探訪(西宮北口,甲陽園)された記事が掲載されています。著者ツイッターによると,5月8日〜9日頃に関西へ来られたみたいです。
http://twitter.com/sakuraitakamasa/status/18962121595 (2010/07/20 11:46)
≪聖地巡礼≫ハルヒSOS団のたまり場のモデルになった喫茶店にあるノート。
海外から来たファンの熱いメッセージを読んでいると、ちょっと目頭が熱くなる。
日本に海外から観光客を呼びたい人は、珈琲を飲みながら一度ゆっくり読む
のがよいのではと思う。阪急西宮北口駅近く「喫茶屋ドリーム」
http://twitter.com/sakuraitakamasa/status/13677337242 (2010/05/10 01:53)
≪聖地巡礼≫阪神間取材。アニメの傑作のあの名場面と同じ光景が目の前に
あるのは、かなりゾクゾクするものだ。二次元と三次元の隙間にいる感覚。
巡礼者のみなさん、おつかれさま&ありがとうございます。
http://twitter.com/sakuraitakamasa/status/13556313708 (2010/05/08 01:07)
≪聖地巡礼≫今日から、京都神戸取材。大人の修学旅行ともいわれる。冬の
箱根エヴァンゲリオンNERV本部ツアー以来だな。チェコのDくんなんか、
すでに1年半前にやってるのがすごいよね。
2.アジア圏では…
「涼宮ハルヒの聖地=兵庫県」での認知は少しありそうです。個人的な経験等をあげておきます。
(1) 先日の朝日新聞記事が隣国のブログで紹介されており,そこから本ブログへのアクセスが未だに見られます。
(2) 今年1月末に,別の課から「隣国のアニメ雑誌記者を招聘する。県内の『涼宮ハルヒ』に関する場所を少し案内しようかと思う」とのことで情報提供したことがあります。
(3) 2008年09月末(サブカル調査当時)に,西宮市内私大の某教授から,台湾「哈日族」の話や,同人誌らしき大連のハルヒの紹介等がありました。

補足として『らき☆すた』(埼玉県久喜市)を。
(4) 既知のとおり,鷲宮町の「萌え御輿」が上海万博に出ています。
(5) 2008年09月に鷲宮町商工会で話を聞いたときに,隣国のアニメ雑誌の記事を見せていただきました。
3.世界の兵庫県へ…
兵庫県ゆかりのコンテンツをもっと活用してもよいかも。
例えば,「涼宮ハルヒとその仲間たち」(SOS団)に,兵庫県の外交親善大使を委嘱するくらいに。
地域を知ってもらうのに,その人になじみがあるもので喚起するのは,最も有効な手法の一つ。
世界にはアニメファンが沢山いて,今なら『涼宮ハルヒ』や『攻殻機動隊』等をかなりが知っているはず。
特に,海外からの留学生や修学旅行等の若者に魅力的な上,他地域と明確な差別化が容易にできそう。
ネットやビデオでしか見ていない無形のものが,兵庫県には現実のものとして存在する!。その感動は何物にも代え難いはずです。
それに加えて,兵庫県本来の自然や文化等をセットにする方が,兵庫県に来てもらいやすいかも。
別記事でも書いたとおり,国内で兵庫県の認知度は高くないし,海外で兵庫県の認知度もあるとは思いにくい。他と同じように日本的なものでPRしても,「日本」の何処かまでしか認知されないでしょう。
それならば,他ではできない「グローバルな兵庫県」の認知手法としての一案でした。
本稿ではアニメ・マンガのコンテンツを例にしてますが,それ以外にも,意外なものが海外から見ると新鮮に映るので,そうしたものでも構わないでしょう。
(書籍データ)
[1] アニメ文化外交 ちくま新書782
著者/櫻井孝昌(さくらい たかまさ) 筑摩書房
2009年05月10日第一刷発行 2009年08月18日購入
ISBN/978-4-480-06487-5
[2] 日本はアニメで再興する クルマと家電が外貨を稼ぐ時代は終わった アスキー新書146
著者/櫻井孝昌(さくらい たかまさ) アスキー・メディアワークス
2010年04月10日初版発行 2010年06月08日購入
ISBN/978-4-04-868481-1
(参考)
*SOS団 (エスオーエスだん)
『涼宮ハルヒ』シリーズで主人公ハルヒが結成した北高内のサークル(学校未公認,同好会未満)。
正式名称は「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」。
ブログ内関連記事:
兵庫県の認知度(1):阪神競馬場は兵庫県宝塚市です。(2010年07月12日)
http://hyogotsucool.seesaa.net/article/156160418.html
兵庫県の認知度(2):甲子園球場は兵庫県西宮市です。(2010年07月12日)
http://hyogotsucool.seesaa.net/article/156161645.html
外務省アニメ文化大使
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/koryu/pop/anime/index.html
兵庫県マスコット「はばタン」 お仕事:ひょうご観光大使
http://web.pref.hyogo.lg.jp/ac02/ac02_3_000000011.html#h01