マンガ作品で描かれる兵庫県の施設にまつわる話などの事例を3つ紹介。全2回の1回目。
1.中央競馬G1での1着同着『Pony Tail』 ―阪神競馬場は大阪でなく兵庫県にあり―
2.時代を先取り?『女性騎手物語 Pony Tail ポニーテイル』作品紹介
兵庫県にあるものなのに,大阪と思われることはありがちです。自分の住む圏域以外では,圏域が一括りに見られて,関西の場合は大阪に集約されるのでしょうか。
でも,地元関係者にとっては,残念で悲しいことです。多くの人が読むような優れた作品で描かれていると,尚更です。
1.中央競馬G1での1着同着『Pony Tail』 ―阪神競馬場は大阪でなく兵庫県にあり―
1ヶ月と少し以前に,中央競馬G1のオークス(優駿牝馬)で1着同着ということがありました。史上初とのこと。
マンガ関連でいうと,マキバオーとカスケードのダービー同着をあげられる方が多かったのですが…。
個人的には,牝馬G1ということで,『Pony Tail』(著者:小野弥夢氏,講談社刊)という少女マンガでの桜花賞同着の方が,先に頭に浮かびました。そこで,作品を読み返しました。
写真:Pony Tail 第4巻 P.63 抜粋 (C)小野弥夢/講談社
※本稿での論証考察のため画像掲載
何と,ものすごくショックなことが…,
― 大阪 阪神競馬場 ― [出典:第4巻 P.63]
「阪神競馬場」は,兵庫県宝塚市(一部,西宮市)の仁川にあります! 大阪ではありません!!
私の知る限り,沿革は戦前に「鳴尾競馬場」が兵庫県西宮市の鳴尾(甲子園の一駅東)にあったのが起こりです。そして,現在の「鳴尾記念」や「目黒記念」の重賞レースは,かつて競馬場が所在したことが由来のはずです。
手元の資料は,1992年〜1995年初版のB5版コミックス単行本全5巻ですので,その後修正されたかどうかは不明です。もし,増刷分やA6版漫画文庫全3巻(2001年6月刊)をお持ちの方,どうなっているかコメントいただければ幸いです。
2.時代を先取り?『女性騎手物語 Pony Tail ポニーテイル』作品紹介
『Pony Tail』の作品中,兵庫県が出てくるのは,競技場としての「阪神競馬場」だけですが,作品内容を紹介せずにはいられません。
ここからは余談となりそうですが,作品の名誉のためにも,間違いの指摘だけでなく,コンテンツの魅力を紹介しておきます。
本作では,前述のG1同着など,マンガでの描写が現実に近似の形で実現した事がいくつかあります。
サッカーマンガの『キャプテン翼』で,ワールドユース? ワールドカップ出場? 海外クラブ? について, 現実の方が追従するかのごとく。
写真:Pony Tail 第4巻 P.128 (C)小野弥夢/講談社
※本稿での論証考察のため画像掲載
まず,作品の方は,作者が着手したのは1991年頃,月刊誌の連載が1992年3月号〜1995年1月号です。単行本のあとがき等で,オグリキャップのことを書かれています。
以下,主な項目を作品ストーリー順にあげてみます。( )書きは現実で実現された暦年,*は違いなどの補足です。
1.女性が競馬学校に入学 (1992年)
*現実に女性騎手を輩出したのは次の12期生
2.女性騎手の誕生と初勝利 (1996年)
*作品,現実ともに一度に3名誕生
3.牝馬クラシックでの1着同着 (2010年)
*作品:桜花賞,現実:オークス
*作品での表彰式は二組一緒です。
4.オークス馬がその年に北米へ (2005年)
*作品:引退繁殖,現実:米オークス参戦
*現実では2004年の桜花賞馬から米オークス参戦
5.有馬記念で牝馬が1番人気で1着 (2008年)
*作品:3歳・最後方追込,現実:4歳・先行逃切
作品完結から10年以上を経た近年に,3,4,5が現実で実現されたのは驚きです!
あと,現実で実現していないのは,上記3.の,女性騎手の重賞勝利とG1勝利ですね。今すぐは難しくても,いつかは…と願いたいです。
最後に,ストーリーを簡単に…。
幼き頃「人馬一体」で騎乗する父親の姿に憧れ,有馬記念の落馬負傷がもとで引退した父親の夢を継ぐために,中央競馬初の女性騎手を目指す主人公。
競馬学校を経て,調教師となった父親の厩舎の所属騎手となり,挫折を経験する中で成長していき,父親譲りの「馬と会話する」ような騎乗スタイルでお手馬の牝馬と共にクラシックに挑戦。
その後は,少女マンガらしく,恋愛(相手は2年上の若手No.1の二世騎手)と勝負の世界(公正な競技に私情は禁物)の間で揺れる主人公,そして最後は…。
一人の人間としての成長が軸のため,競馬マンガとしては,レースの展開・駆引の描写は限られる感は否めませんが,競馬サークルや現役騎手等の取材に基づく描写は感じ取れます。
(書籍データ)
Pony Tail(ポニーテイル)/講談社コミックスミミ
著者/小野弥夢(おの ひろむ)
1巻 KC388 1992年7月13日第1刷発行 ISBN 4-06-170388-9
2巻 KC402 1992年12月9日第1刷発行 ISBN 4-06-327402-9
3巻 KC416 1993年5月13日第1刷発行 ISBN 4-06-327416-0
4巻 KC430 1993年10月13日第1刷発行 ISBN 4-06-327430-6
5巻 KC474 1995年2月13日第1刷発行 ISBN 4-06-327474-8
(参考)
読売新聞 匠の馬具 レース支える…宝塚の老舗メーカー「時田馬具」(2010年07月02日)
http://osaka.yomiuri.co.jp/re-eco/news/20100702-OYO8T00424.htm
次記事:兵庫県の認知度(2):甲子園球場は兵庫県西宮市です。(2010年07月12日)
http://hyogotsucool.seesaa.net/article/156161645.html